国税庁がまとめた2022年(令和4年)分の確定申告の状況を e-Taxに焦点を当てて分析してみました。参考にした資料は「令和4年分の所得税等の確定申告状況について」です。国税庁の確定申告の最終報告書は申告期間を過ぎて約1年後に出るようで、この資料の日付は令和5年5月で報告書としては最新のものです。
e-Taxは2004年(平成16年)に運用が始まり、2019年(平成31年・令和元年)にマイナンバーカード方式が導入され、さらに2021年(令和3年)から「スマホによるQRコード認証」が始まり
e-Taxはずいぶん容易になりました。2022年(令和4年)現在で、国税庁お奨めの自宅からの e-Taxは 387万人であるのに対して、未だ書面で提出する人は
800万人にのぼっています。
<令和4年分の確定申告状況の分析>
令和4年分の確定申告状況の分析を、国税庁の参考資料の「トピックス」と、次項<自宅等からの e-Tax利用状況>を見ながら分析しました。
- 所得税申告者数は 2,295万人でここ10年間ほぼ横ばいです。
- そのうち、申告納税額がある人は 653万人(653÷2295=28%)、申告納税額がない人は309万人(309÷2295=14%)おり、還付申告が目的の人が 1,333万人(1333÷2295=58%)いるようです。
- 全 e-Tax利用者数は 1,495万人で、全申告者数 2,295万人に対して1495÷2295=65%です。残り35%の 800万人は書面で提出している人です。
- 上記の全e-Tax利用者のうち、税務署の確定申告会場や地方会場の利用者は 419万人(265+154)です。ここの参加者はすべて e-Taxの利用者となります。
- 税理士による代理送信(主に個人事業主)と、納税者本人の自宅からの送信を合計したものを「自宅等からe-Tax」と呼んでいます。税理士による代理送信は 484万人で、本人が自宅から e-Taxで申告した人は 592万人です。
- 本人が自宅から申告したe-Taxには、ID・パスワード方式の 171万人が含まれており、国税庁お奨めの「マイナンバーカード読み取り方式の e-Tax」で自宅から申告した人は 387万人です。統計上の全 e-Tax利用者 1,495万人に対して、自宅から国税庁お奨めのe-Taxをした人は、わずか 1/4(387÷1495=26%)ほどしかいません。
- 自宅から国税庁お奨めのe-Taxで申告した人 387万人のうち、スマホを使って申告した人が 179万人(179÷387=46%)もいるのにビックリです。残り54%は PC利用ということになります。入力する項目が多い人はPCで、入力が少なく還付目的などの人はスマホでということでしょうか。
- マイナポータル連携により控除証明書等を取得した人は 132万人います。
<自宅等からの e-Tax利用状況>
自宅等からのe-Tax利用による所得税等の申告書の提出人員は
1,076万人、自宅からID・パスワード方式の送信は
171万人、国税庁お奨めの自宅から e-Taxは
387万人です。
<書面提出者800万人の解析>
全 e-Tax利用者数
1,495万人のうち、自宅から国税庁お奨めのe-Taxで申告した人は
387万人ですが、自宅からe-Taxでも ID・パスワード方式の人が
179万人いることを考えてみます。この ID・パスワード方式はマイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対応ということでしたが、税務署は少しでも e-Tax人数を増やしたいために、既にマイナンバーカードを取得した人にもこの方式を許可しています。
ID・パスワード方式で申告するには、所管税務署に行って認可を受ける必要があります。職員の対面による厳格な本人確認のうえ、ID(利用者識別番号)とパスワード(暗証番号)を取得します。この方式は
国のコンピュータにログインして、計算や送信までするので、e-Tax申告ということになります。
一方、書面で提出した人 800万人のうち「印刷して提出」と「手書きで提出」の人は、ほぼ半々のそれぞれ 400万人です。「印刷して提出」する 400万人は国のコンピュータにログインせずに計算のみ行うので、結果をネットで送ることができず、用紙に印刷して届けるしかありません。この「印刷して提出」する人は、わずか
2~3分のコンピュータのログイン操作を覚えるだけで、国税庁お奨めの e-Taxになれるのに残念です。
申告書の作成時間は ID・パスワード方式とほぼ同じですが、用紙で受け取ると税務署職員にとっては、用紙を1枚ずつ「OCR(光学文字認識)」で読み取って電子化する作業が待っています。e-Taxが始まって約20年も経ちましたが、お奨めの
e-Taxで申告する人はまだ 387万人に過ぎません。「印刷して提出」する人が国のコンピュータにログインする操作を習得するだけで、国税庁お奨めの
e-Taxで申告する人が一挙に倍増します。
国はこんな内部事情を喧伝していませんが、e-Tax化の本質はこのOCR操作という単純な手作業をなくすことにあります。表向きは e-Tax化するとこんなメリットがありますと言っていますが、国は優秀な国家公務員にもっと前向きな仕事をさせたいのです。ちなみに、全国には約
5万6千人の税務職員がいるようです。
<参考になる国税庁のホームページ>
「確定申告書等作成コーナーから e-Tax」のネット上の解説書は下記3つがあります。
・
確定申告書等作成コーナー ご利用ガイド(パソコン版)
・
確定申告書等作成コーナー ご利用ガイド(スマホ版)
・
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