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一般の人がちょっと危険そうな電気の存在を意識するのは、道路に林立する電柱と配電線、そこから家の外壁への引き込み線、家の中のコンセントにつなぐ家電品ぐらいでしょうか。今回は電気がどこで作られ、どんなルートを経て私たちまで届くのか、まずその概要を見ていきます。
そして、日本では東に50Hz、西に60Hzの2つの周波数が存在しています。1国を2分して異なる周波数を採用している国は、世界で日本だけです。2つの周波数があっても、それぞれの地区内の人々にとって周波数は1つですから、それで何の不都合も感じないでしょう。ただ、東西で周波数が異なると、災害時に両者間の電力融通が簡単にはいきません。50Hz-60Hzの併存を俯瞰すると、昔は「影」ばかりが目立ったのですが、近頃は「光」も見えてきた?
<発電所から消費地までの電気の流れ>
電気の大まかな流れは下図に示すように、「発電所→送電線→変電所→配電線→消費地」となります。発電所は今まで水力・火力・原子力がメインでしたが、近年はクリーンエネルギーが叫ばれ、風力・地熱・太陽光なども増えてきました。大きな発電所では電圧を10万Vを越える高電圧にして、多くの変電所を経由しながら徐々に降圧して消費地に届けます。
電気はちょっと間違うと危険な施設にもなってしまいます。電気の安全を図るための省令「電気設備技術基準」で、安全のための規程が細かく決められています。まず、この法で決められた電圧の種類を確認しておきましょう。電圧の種類は次の3種に決められています。
・低圧:600V以下
・高圧:600Vを超え7000V以下
・特別高圧:7000Vを超えるもの、配電用変電所の前まではすべて特別高圧です。
(超高圧という電圧区分はありませんが、17万Vを超える特別高圧をこう呼ぶようです)
<消費地の配電線を知ろう>
住宅街の道路には右図のような電柱が林立しています。電柱は倒壊を防ぐため全長の約6分の1を地中に埋めるように決められています。
日本の電柱の電線は右図のように、上から避雷線、高圧配線の3相6600V、低圧配線の単相3線式100/200Vと順に設置しています。図の変圧器は柱上変圧器またはポールトランスと呼ばれ、高圧の6600Vを低圧の100/200Vに降圧して各家庭に届けます。
柱上変圧器の低圧側 100/200Vの中性点は、電柱近くで接地(アース)されています。この接地は安全面から法で決められており「B種接地」と呼ばれます。
<50Hz-60Hzと電気機器設計>
日本で電力事業を立ち上げるとき、東京電灯(現東京電力)は50Hzのドイツ製の発電機を導入し、大阪電灯(現関西電力)は60HzのアメリカのGE製の発電機を導入しました。これが契機となり、日本は世界でも例をみない1国2方式の周波数50Hz-60Hzの併設が始まりました。
地球は極めて大きな物体であり非常に電位が安定しているので、大地と低い抵抗で接続すれば低い電位に安定します。通常は大地の電位はゼロと考えて差し支えありません。
電気機器設計においては周波数50Hz-60Hzの併設に、必然的に向き合わざるを得ません。その理由を理論的に見ていきましょう。機器の電圧が正弦波であるとき、実効電圧V、コイル巻数n、周波数f、鉄心を通る磁束Φ
の関係はよく知られた次式になります。この式はファラデーの法則から簡単に導けます。
V = KnfΦ ただし、V:実効電圧、K:定数、n:巻数、f:周波数[Hz]、Φ:磁束[Wb]
この式に従った機器設計の出発点は、まず実際に使う周波数fを決めることから始めます。電気機器は鉄心(電磁鋼板)にコイルを巻いた構造が一般的ですから、次に磁束が通る鉄心を磁束が飽和しない適度の磁束密度になるように巻き数nを決めます。
上式から電圧が一定なら、周波数fと磁束Φは反比例することが分かります。周波数60Hzで専用設計したモータがあるとします。このモータを50Hzで運転すると、磁束Φを増やそうとして励磁電流が大きくなって、モータは過熱して使いものになりません。
逆に、周波数50Hzで専用設計したモータを60Hzで運転すると、磁束Φを通す鉄心は20%の余裕をもってそのまま使えます。見方を変えれば、60Hz専用に設計すれば鉄心はもっと小さくできるということです。ちなみに、電気部品や電気機器はその周波数を高くすると、機器寸法は小さくなるという自然法則は上式からもいえます。
私は家電品の誘導モータを10数年に亘り設計してきましたが、小電力モータは50Hzで設計します。こうすることで 60Hzでもそのまま使えて共用品となります。ユーザにとっては住居先や引っ越し先の周波数を心配をする必要がありません。メーカにとっても共用品にすれば、品種が半分になり管理が容易になります。最近ではうれしいことに、エヤコンのようにインバータが内蔵されたヘルツフリーの製品も登場してきています。
<周波数変換所>