Blu-rayレディスクコーダでTVを録画した映像、ビデオカメラで撮影した映像などが一般的な動画ですが、最近ではデジカメでも動画を撮影できるようになりました。これらの動画をパソコンで100%再生できるか?
というと簡単ではありません。自分のパソコンで再生できても、他のパソコンで再生できる保証もありません。
動画の記録形式は多様で、統一した規格あるいはデファクトスタンダード(事実上の業界標準)が存在しなかったことがその理由です。ただ、最近のパソコンや携帯端末用の動画フォーマットは、「MP4」が業界標準として認知されてきたようです。
<動画の記録形式>
動画の記録形式には、大きく「ファイル形式」と「圧縮方式」の2つの属性があります。この2つが一意的に決まらないことが多く動画の扱いを難しくしています。ただ、動画を効率的に扱うためには必然のテクノロジーでもあります。
◇ファイル形式(拡張子で区別する)
動画のファイル形式は、動画と音声の2つのデータを管理する方式で、一般に
動画フォーマットと呼ばれ
拡張子で区別します。この動画ファイルは、動画と音声の2つのデータを入れる
コンテナ(container:入れ物)と考えることもできます。よく目にする動画フォーマットを次に示します。( )内は動画ファイルの
拡張子です。
動画フォーマットの例:
AVI(.avi)、MP4(.mp4)、QuickTime(.mov)、MPEG(.mpg)など
◇圧縮方式(コーデックで区別する)
動画は一般に容量が大きくなるため、音声データと共に
圧縮(エンコード)して、ファイルサイズを小さくします。再生するときにはこれを元に戻す必要があり、この機能を
伸長(デコード)といいます。この2つの機能を持つプログラムを
コーデック(CODEC:Coder/Decoder)と呼び、動画を再生するためにはこのコーデックが必須です。
動画コーデックの例:h.264、mpeg-2、wmv など
音声コーデックの例:aac、mp3、wma など
(参考)デジカメの拡張子とコーデック
2013年ぐらいまでのデジカメの動画コーデックは、ほぼすべてのメーカで「
MotionJPG」でした。容量は増えますが、もともとデジカメが持っているJPEG圧縮エンジンを利用できるからです。その拡張子はメーカによって次のように異なり、ユーザ-の混乱を招きました。
・avi :キャノン、カシオ、シャープ、リコー、富士フィルム
・mov:パナソニック、オリンパス、ニコン、ペンタックス
ただ、最近の多くのデジカメは、動画コーデックは「
h.264」、拡張子は「
mp4」が主流となりました。拡張子は1つで混乱もなくなり、圧縮効率が上がり容量は格段に少なくなました。さらに、ハイビジョン規格の「AVCHD」での撮影もできるようになっています。
<動画フォーマットとコーデックの仕組み>
動画フォーマットとコーデックの関係を、少し詳しく見ていくことにします。
動画ファイルはひとつのデータのように見えますが、実際は違います。動画ファイルは「動画」と「音声」がそれぞれコーデックによって圧縮されて、動画データと音声データとなり、動画ファイル(拡張子は
.avi、.mp4、.mov、.mpgなど)という “入れ物” にひとつにまとめられています。動画ファイルは動画データと音声データを同梱できるので「コンテナ」ともいわれるのです。
画像や文書ファイルなどと異なり、動画ファイルはファイルの拡張子を見ただけでは、何のコーデックが使われているかわかりません。動画と音声を別々のデータとして、動画ファイルに格納する仕組み
(参照:動画配信に必要なコーデックの基礎知識) を下図に示します。
下図
(ここでは「動画」は「映像」という用語で表しています)は、コーデックの異なる2つのMP4の動画ファイルが、ユーザーの視聴環境
(パソコンには h.264/mpeg-4 AVCとAACのコーデックは有り、h.265のコーデックは無いとします)によって視聴できたり、できなかったりする様子を例示しています。パソコンで動画を見るには、圧縮したデータを元に戻す必要があります。すなわち、圧縮したコーデックと同じコーデック
が、そのパソコンに存在することが必須なのです。
<最近の動画フォーマット>
10年くらい前までは動画フォーマットの主流はAVIでしたが、最近はスマホなどの携帯端末への搭載に適したMP4が誕生し、パソコン用も含めてその主流の座を獲得しています。
AVIは「Audio Video Interleave」の略で、Microsoft社がApple社のQuickTimeに対抗してWindows用に開発した古い動画フォーマットです。このAVI形式は自身でコーデックを定義していない点で特異です。つまり、コーデックがファイルから完全に独立しているのです。
Microsoftはその後、WMVという新しいフォーマットを制定し、AVI形式は主流から外れる方向の道筋をつけましたが、それにも関わらずAVI形式はいまだに現役であり続けています。その理由は逆説的ですが、AVIがコーデックを選ばないことです。現在でもビデオキャプチャや、パソコン画面の録画などに重宝されています。
MP4は MPEG-4 Part14の略称で、Apple社のメディア技術QuickTimeのファイル形式を元に、ISO/IECの動画コーデックの国際標準規格であるMPEG-4の第14部で策定された動画フォーマットです。低サイズでもスマホなどで高画質を楽しめるようにということで誕生しました。
MP4はスマホでは iPhone 系とAndroid系の全てでサポートされています。また、ブラウザでの 「
html5の
videoタグの
MP4対応」については、MicrosoftのEdgeとIE、Mozilla Firefox、Google Chrome、Apple Safari、Operaなど全ての主要ブラウザがサポートしています。
MP4のコーデックには主に h.264が使用されて、その速いスピードと高い品質を誇って、Youtubeなどのストリーミング動画や、インターネットにおけるメディア配信に最適な形式として大ヒットとなりました。
(注)Appleの独自規格「
M4V」
M4Vという動画フォーマットも、多くのメディアプレーヤとブラウザでサポートされています。Apple社の自社製品 iPhone、iPad、iTunesなど向けに開発された独自仕様の動画フォーマットで、iTunesのデフォルト形式です。使う上では
MP4とほぼ同じ仕様になっています。
巷では次のような
誤解が流布 していますが、全て間違いです。
・MP4とM4Vの違いは、圧縮コーデックがmpeg-4かh.264かという違いです。
・m4vは映像部分のみ、m4aは音声部分のみで、mp4は映像+音声の動画フォーマットです。
<最近のコーデック>
まず、コーデックに関する基礎知識をまとめておきます。
・コーデックは、映像や音声データをエンコードとデコードするプログラムである。
・同じフォーマット(ファイル形式)でも、コーデックが違えば別モノである。
・動画再生時には、エンコード時に使用したコーデックが視聴環境にも必要となる。
さて、最近の代表的な動画コーデック
(参照:最適な動画コーデック選択のための3つの視点)は
h.264です。最初はITU-T(国際電気通信連合)によって勧告され、ISO/IECでも「mpeg-4 Part 10 Advanced Video Coding」として規定されています。どちらも技術的に同じものであり、両者の呼称を「
h.264/mpeg-4 AVC」と併記することもあります。
このh.264は、DVD規格のmpeg-2の約2倍の圧縮率といわれています。つまり、mpeg-2の標準ビットレートは8Mbpsに定められていますが、h.264で圧縮すると約4Mbpsで同等の画質が得られることになります。
さらにISO/IECでは、次の標準規格
h.265を策定中で、h.264の2倍の高圧縮率ですが普及にはもう少し時間がかかりそうです。この h.265は、2014年11月末時点では主要ブラウザはすべて非対応です。現状の動画コーデックは、その他
mpeg-2、mpeg-4 なども使われています。
音声コーデックは MP4とAVIフォーマット共に、主に aacやmp3 が使用され、他にも多くのコーデックを格納することができます。
さて、ある動画ファイルで今まで述べてきたような映像パラメータを知るには、まず動画フォーマット(ファイル形式)とそのコーデックを確認します。関連して
フレームサイズ(横縦の画素数)、ビットレート(秒あたりのデータ量:PCでは500kbps程度)、フレームレート(秒あたりの画像枚数:テレビは30fps)、メモリ容量
なども常に意識しておく必要があります。
動画ファイルのこんな映像パラメータを簡単に調べるには、フリーソフトの
MediaInfo を利用するのが便利です。
<参考:AVCHD規格>
最近のデジカメは動画も高精細に撮れるようになりました。私が持っているPanasonic のLUMIX DMC-SZ7は、AVCHDとMP4の2つの動画フォーマットをサポートしています。このうちAVCHDの動画圧縮には最新のコーデックである「h.264」を採用しています。音声圧縮にはドルビーデジタル、またはリニアPCM
を採用しています。
このAVCHDは、元々HD(high definition video)信号を記録するハイビジョンビデオカメラの規格で、下図の点線枠で示すように少し複雑なフォルダ構成で動画が保存されます。これはBlu-rayディスクという
ディスクへの書き込みも考慮した仕様だからのようです。
下図の最下段にある拡張子「.MTS」のファイルがその動画ファイルです。なお、この動画ファイルを単体ファイルとして扱うときは、拡張子は「.M2TS」となります。共にそのコーデックは
h.264です。
ちなみに、Blu-rayディスクができる前の
DVD規格でも、これに似た特異なフォルダ構成で動画ファイルが格納されており、その動画コーデックは「mpeg-2」です。
一方のMP4で撮ったものは、すでに述べたように単体の動画ファイルです。右図の上段にある拡張子「.MP4」のファイルがその動画ファイルで、画像ファイル「.JPG」と並んで単体ファイルとして保存されています。
注意しなければならないのは、MP4とAVCHDの動画コーデックは共にh.264を採用していますが、両者は全く互換性のない別物です。